災害(情報収集・捜索・被害状況把握・物資輸送)
災害時のドローン運用は、平時と真逆です。
「飛ばすこと」より、関係機関の活動を邪魔しないこと、二次災害を起こさないことが最優先になります。
このページは、災害現場でドローンを使うときに必要な考え方を、無理なく安全に回す順番で整理します。
目的
危険で近づけない場所の状況を早く把握し、初動判断を支えるために使われます。 二次災害を避けながら「見える化」することが目的です。 災害用途の価値は、映像が綺麗かどうかではなく、意思決定に必要な情報を、早く・正確に・共有できる形で届けることにあります。
現場
緊急車両や関係機関が動いており、平時と違う制約が生まれます。 空域の扱い、連絡系統、現場の優先順位を整理し、無理をしない運用が最優先です。 災害現場では、ヘリコプターの低空飛行、救助の導線、立入規制が同時に走ります。 だから「飛べるかどうか」より、飛んでよいのか(運用として成立するか)が重要になります。
成果物
現場映像(ライブ配信を含む)、被害箇所の位置が分かる写真、簡易マップ、報告書などです。 状況の共有に使える“分かる形”が求められます。 とくに災害現場では、位置情報(どこ)と時系列(いつ)が揃っていることが価値になります。 「見ただけで判断できる」形に整えるほど、現場の役に立ちます。
よくある誤解
「災害時は何でも飛ばせる」と誤解されがちですが、むしろ確認すべき事項が増えます。 急ぐほど安全確認と連絡を省かない姿勢が重要です。 災害時は、関係機関の航空運用が増えるため、むしろ平時より「飛ばない判断」が重要になる場面があります。
この用途で特に押さえるべき「特定飛行」の論点
災害現場は、特定飛行の条件が複合しやすい用途です。特に重要なのは緊急用務空域です。 緊急用務空域は、災害・事故対応のために設定される空域で、原則としてドローンの飛行はできません。 さらに、捜索や広域把握では目視外、夜間対応では夜間、物資輸送では物件投下や危険物の論点が重なることがあります。
| 論点 | 災害で起きやすい場面 | 現場での対策の方向 |
|---|---|---|
| 緊急用務空域 | 救助・消火・警戒の有人機が飛ぶ可能性がある地域 | 最優先で指定状況を確認。指定中は原則飛行しない |
| 空港等の周辺/150m以上 | 救援ルート・ヘリ航路に近い/地形差で高度が上がる | 空域の該当確認を先に実施し、必要なら所管と調整 |
| 目視外 | 捜索・広域把握・山間部で機体が見えない | 監視体制(補助者/配置/中止基準)を厚くし、区画を分割して運用 |
| 夜間 | 捜索・監視の継続、停電で視認性が低い | 灯火・視認・中止基準を厚く。安全が担保できないなら飛ばさない |
| 物件投下/物資輸送 | 物資を落とす、吊り下げる、切り離す | 落下範囲を最悪ケースで見積もり、第三者導線を完全に遮断 |
災害用途の鉄則:「急ぐほど、飛ばない判断が増える」。
災害現場は有人機の活動が増えるため、ドローンは“邪魔にならない形”でしか使えません。
指定空域や連絡系統が不明なまま飛ばすのが、最も危険です。
災害現場でまずやること(“飛ばす前”の優先順位)
災害用途は、飛行設計より先に「現場のルール」を固めます。 ここを飛ばすと、飛ばしてはいけない場所・時間に飛ばしてしまい、救助活動の妨げになります。
STEP1|指揮系統(誰の指示で動くか)を確定する
災害現場は「善意で飛ばす」が一番危険です。必ず指揮命令系統を確認し、誰の判断で飛ぶのかを固定します。
STEP2|空域の確認(特に緊急用務空域)を最優先で行う
緊急用務空域が指定されている場合、原則としてドローンは飛行できません。 まず指定状況を確認し、指定中であれば「飛ばない」を前提に行動します。
STEP3|連絡手段(止める指示が届く状態)を確保する
災害時は状況が変わります。有人機が来る、規制が変わる、避難が始まる―― こうした変化に対応するには、いつでも「止める指示」が届く状態で運用する必要があります。
STEP4|無理をしない運用(区画分割・短時間・中止優先)
災害現場は予測が外れます。飛行は短時間で区画を分割し、危険兆候が出たら即中止。 “成果を取りに行く”より、“事故を起こさない”を最優先にします。
成果物を“役に立つ形”にするポイント(共有のための整理)
災害用途は、映像や写真があっても、整理されていないと役に立ちません。 共有に使える形に整えるための要点をまとめます。
| 整理ポイント | なぜ重要? | 最短のやり方 |
|---|---|---|
| 位置(どこ) | 被害箇所が特定できないと動けない | 地図スクショ+ピン+写真番号の対応表 |
| 時刻(いつ) | 状況は変化する。時刻がないと判断がズレる | ファイル名に日時を入れる/一覧表を作る |
| 優先度(何が危険か) | 全てを同じ重みで渡すと、現場は動けない | 「危険」「要確認」「参考」に分けて報告 |
| 共有手段(誰に、どう渡す) | 現場は回線が弱い。共有が詰まると意味がない | 低容量版(短尺/静止画)+原本の二段構え |
物資輸送(投下・吊り下げ等)で特に注意すること
物資輸送は、災害用途の中でもリスクが一段上がります。 「運べる」より「落ちたときにどうなるか」を先に考える必要があります。
- 落下・飛散の最悪ケース:風・高度・速度で落下点はずれます。最悪ケースで第三者が入らない設計が必要です。
- 投下の中断手順:途中で中止になったとき、投下を止め、どう回収するかを先に決めます。
- 受け取り側の安全:受け取り地点の安全確保(立入管理)と、受け取り合図・合流手順が必要です。
- 医薬品・危険物:搭載物によっては危険物の論点が出るため、性状確認と根拠を残します。
最後に|災害時は「飛ばさない判断」も能力です
災害用途のドローンは、平時より社会的な意味が大きい分、失敗のダメージも大きいです。
空域(特に緊急用務空域)と指揮系統を確認し、無理をせず区画を分割し、共有できる形で整理する。
急ぐほど、確認と連絡を省かない――それが災害現場での正解です。



