【1】東京五輪開会式で使われた1824台のプレミアムドローンとは?
第32回夏季オリンピック東京大会が、7月23日夜、国立競技場(東京都新宿区)で開幕した。開会式は史上、初めての無観客で行われることとなった。
テレビ中継で視聴された方も多かったと思われる。
そんな中で、ドローン操縦士の皆さんにとって、1824台のドローンショーは、注目のうちの一つであろう。
東京オリンピックの市松模様のエンブレムから、地球儀の形に変化するという演出であるが、驚いたのは、その制御の精密さだ。
(出典:Tokyo2020 公式twitter)
確かに、ドローンショー自体は、数年前より、世界各地で行われており、それなりの規模のものも日本でも行われているが、次世代のドローンを使用し、より精密な制御をパソコンで行っていたショーとしては、これまでにない斬新なパフォーマンスだったという見方もできるだろう。確かに、これまでのドローンショーは何となく、ドローンからの光がぼやけていたような感じがするが、今回のショーでは随分と鮮明な光を発していたように感じた人も多いのではないだろうか。
https://www.youtube.com/watch?v=bQy1PUSw77M
https://www.youtube.com/watch?v=ypvgtOAo2wk
今回、ドローンショーを行ったのは、半導体素子メーカーで有名な「インテル(本社アメリカ/日本法人は、東京都千代田区丸の内にあるインテル株式会社)」であり、ドローンの機体も、パソコンによるドローンの自動操縦も、自社製で行っている。
今回のショーで使用されたドローンは、インテルの最新式ドローン「プレミアムドローン」である。
4つのLEDを搭載しており、重さ340g。特に、毎秒11mまでの強風にも耐えられるという、耐強風性が大きな特徴だ。
国土交通省の標準マニュアルには、「毎秒5m以上の突風が発生するなど、無人航空機を安全に飛行させることができなくなるような不測の事態が発生した場合には、即時に飛行を中止する」旨記載されているが、この記載でも「毎秒5m」とあり、この記載と比較しても、「PREMIUM DRONES」は、この軽量ながら、毎秒11mまでの耐強風性というのは大きな特徴である。
ドローンショーで最優先されるドローンのスペックは、LED照明の数と、耐強風性である。
「プレミアムドローン」は、これまで同様のショーで使用されていた同社の「クラシックドローン」と比較して、明るく、より速く、より鮮明な状態で、パフォーマンス時の位置精度が向上している。 4つのLEDを備えており、明るさを増しているため、夜間に、都市などの周囲光が高い環境下でもあまり影響を受けなく飛行可能だという。耐風性もより一層向上している。
以下は、インテルがホームページ内で公表している「プレミアムドローン」のスペックである。
標準ショータイム 11分
最大ショータイム 無制限または拡張
LEDの数 4
風耐性 最大11M / S
最小飛行場 442平方メートル
重さ 340グラム
充電時間 30分以上
より:出典
ドローンショー自体は、インテルのみならず、日本企業も含め、複数の会社が手掛けている。
一般的に、ドローンショーを実施するまでの流れは次のようなケースが多い。
?ドローンショーを行いたい人(クライアント)は、「ドローンを使用してどのような演出を行いたいか」を伝える。
?アニメーション動画を作成し、?の演出を具体的にした後、それを活用して、ドローンの飛行のシミュレーションをパソコン上で行う。
?その後、実際にドローンショーを行う場所で、それぞれのドローンが飛行するルートを決定していく。
飛行自体は、「自動操縦」であり、多くの場合、操縦は、何台かの「パソコン」を用いて行う。
ドローン機体とドローン機体の間が狭ければ狭いほど、見ている側は鮮明に見えるが、あまりにぎりぎりに設定してしまうと、当日の風速等により、ドローンの機体同士の衝突の可能性が高くなる。
当日の天候、特に、風速により、ドローンの機体同士に対する影響も考える必要がある。しかも、自然現象の風速だけでなく、前後左右上下のドローンのプロペラ等から受ける風も計算しなければならない。
飛行させるドローンの数が多ければ多いほど、難しくなる。
そこの部分が、非常に難しく、半導体素子メーカーだからこそ可能な独自のノウハウなのだろう。
さらに、大規模なイベントの場合、ハッキング等のリスクも一層考慮する必要がある。
それらを制御するソフトが、インテルが独自開発した「ショー・コントローラー・ソフトウェア」である。このソフトウェアは、毎回のフライト前に、飛行させるドローン1台1台を徹底的にチェックし、バッテリー駆動時間、GPS 感度などに基づいて、各フライトに最適化することが可能だ。1 台のコンピューターで数百、数千台のインテル製のドローン(プレミアムドローン、クラシックドローン)を制御できる。
さらに、ドローン群を制御してアニメーション処理を自動化し、動きのある立体感を実現することが可能という。
Process | INTEL DRONE LIGHT SHOWS
インテルによる「ドローン・ライトショー」
実は、インテルのホームページ上でも、「ドローン・ライトショー」の問い合わせ、仮申し込みができる。
閃光で彩るインテル「ドローン・ライトショー」
https://inteldronelightshows.com/
このホームページによれば、ドローン200機を使用した場合約1200万円~、300機のドローンで約2400万円~、500機のドローンで約3600万円~となっている。ドローンの数を増やすことにより、より解像度の高いイメージ、さらなる奥行き、詳細な表現、より複雑なアニメーションや情景を伴うパフォーマンスが可能だという。
今回のショーでは、1824台使用しているため、1億5000万円以上の費用はかかっていると推測される。
いずれにしても、「ドローンショー」という言葉が、今回の東京五輪の開会式をきっかけに、多くの人に認知されたことは間違いない。
そのため、日本全国各地のイベント関係者が、「ドローンショー」を開催したいと考える人も増えてくるだろう。
ただ、そういった場合に問題となるのが予算である。インテルに発注できるほどの余裕のある予算がある場合は極めて少ないと考えられる。
そこで、もっと低い予算で、質の高いショーが可能になれば、かなりの需要はあるのではないだろうか。
実際、すでに、ドローンショーの分野に進出している日本企業や、ベンチャー企業がいくつかある。
そういった企業は、既成のドローンにLEDを複数搭載する改造をし、市販の「3Dアニメーションソフト」で飛行ルート等をシミュレーションし、ドローンを制御するソフトを独自開発(既存のソフトのカスタマイズ含む)している場合が多い。
いずれにしろ、「ドローン」が好印象で多くの人に認知されたことは歓迎すべきことだ。