ドローン空撮
(PR・観光・不動産・イベント)
空撮は「映像がきれいか」だけで決まりません。
ロケハン(下見)→安全設計→当日の運用→納品の管理までがセットで、ここが弱いと、撮影品質も安全も一気に崩れます。
このページは、空撮案件を“現場で回せる形”に整理します。
目的
地上では撮れない「高さ・広がり・動き」を映像や写真で見せ、魅力を伝えるために使われます。 PR素材づくりや記録、集客の強化が主な狙いです。 空撮の価値は、単に上空から撮ることではなく、視線の導線(どこを見せるか)と、安心して使える素材として成立させることにあります。
現場
ロケハンで離発着場所・人の動線・障害物を確認し、撮影カットに合わせて飛行ルートを決めます。 撮影当日は、周囲への声かけや立入管理をしながら安全に撮ります。 空撮は「撮影の都合」で飛ばしたくなりますが、現場は必ず変動します。人が増える、風が変わる、通行が発生する――これを前提に、途中で中止できる運用にしておくことが重要です。
成果物
編集済みの動画(PR動画・SNS用短尺)、写真(Web掲載・パンフ用)、素材データ一式などです。 現場によっては、撮影許可の記録や撮影ログも求められます。 近年は「納品物」だけでなく、許諾の証跡(施設許可・関係者同意)や、運用の証跡(飛行計画・日誌・当日の記録)がセットで要求されることも増えています。
よくある誤解
「いいカメラなら誰でも同じ映像になる」と思われがちですが、実際はロケハンと安全設計で品質が決まります。 また「登録済みならどこでも撮れる」わけではありません。 空撮は“撮れる・撮れない”より、撮れる状態を作れるか(現場設計)が勝負です。
この用途で特に押さえるべき「特定飛行」の論点
空撮は、観光地・市街地・イベント周辺など、人や建物が多い場所になりやすく、特定飛行に該当する条件が重なりがちです。 先に「当たりやすい条件」を理解しておくと、後で無理な撮影計画になりません。
| 論点 | 空撮で起きやすい場面 | 現場での対策の方向 |
|---|---|---|
| DID(人口集中地区) | 街中のPR、不動産、駅前、観光地の中心部 | 地図で事前判定し、必要手続・立入管理の成立可否を先に決める |
| 空港等の周辺 | 海岸・河川・観光地が空港圏にかかるケース | 早期に該当確認。境界付近は管理者・所管へ確認し、証跡を残す |
| 150m以上 | 崖・山・高台、谷を跨ぐカット、上昇カット | 地形とルートで最高AGLを見積もり、上限設定と中止基準を作る |
| 30m未満(人/物件) | 建物に寄るカット、道路沿い、狭い離発着場所 | “測る”より“入れない”。第三者導線を遮断し、補助者と役割分担 |
| 目視外 | 被写体に集中して機体を見失う、建物裏に回る | 監視体制(補助者/配置/中止基準)を先に設計し、無理なルートを捨てる |
| 夜間・催し場所上空 | 夜景、イルミ、祭り・イベントの“雰囲気撮り” | 暗所の視認性と、落下リスクを前提に。主催者・警備と調整し、成立しないなら中止判断 |
空撮の鉄則:「撮りたいカット」から入ると事故に近づきます。
先に“区切れるか(第三者上空を避けられるか)”を判断し、成立する範囲でカットを組み立てると、撮影品質も上がります。
空撮の品質が上がる「現場設計」の型
空撮は、偶然うまくいく現場もありますが、仕事として再現するなら“型”が必要です。 ここでは、案件ごとにブレにくい順番だけ整理します。
STEP1|ロケハンで「飛べる形」になるか判定する
離発着場所が確保できるか、第三者の導線はどこか、障害物・電線・樹木はどこか、風の抜けはどうか。 ここで「区切れない」「安全に回せない」と判断したら、撮影プランを作り替えます。
STEP2|カットではなく“ルート”で撮影を組む
空撮はカット割りを欲張るほど、飛行が長くなり、リスクも増えます。 先に安全に飛べるルートを決め、その中で撮れるカットを作ると、現場が安定します。
STEP3|立入管理と声かけを「撮影の一部」に組み込む
見た目の映像は空中で決まりますが、事故は地上で起きます。 立入管理の範囲、補助者の配置、声かけの文言を事前に決めておくと、当日が静かに回ります。
STEP4|中止基準を先に合意しておく
「風が強い」「人が増えた」「誘導が成立しない」など、現場は必ず想定外が起きます。 中止基準を先に共有すると、当日の判断が揉めません。
発注者に先に伝えると揉めない「説明のポイント」
空撮は「天候で延期」のイメージが強いですが、本当はそれだけではありません。
発注者に先に伝えるべきは、①安全設計が成立しないと飛べない、②当日の人の動きで条件が変わる、③撮影許可や施設ルールが別にある、の3点です。
ここを事前に共有すると、「当日になって急にダメと言われた」になりにくく、信頼が残ります。
納品で差が出るポイント(成果物を“使える形”にする)
空撮は撮影して終わりではなく、納品物が「使える状態」になって初めて価値が出ます。 ここを押さえると、追加修正が止まりにくく、利益が残ります。
納品の基本セット(例)
編集済み動画(横長/縦長など用途別)+サムネイル+写真(選定済み)+素材一式(必要な場合)を、フォルダ構成を決めて納品します。
さらに案件によっては、施設許可の記録、当日の運用記録(飛行計画・日誌等)、撮影日時・場所・機材情報などの付帯情報が求められます。 “誰が見ても後から説明できる”形で残すと、発注者の安心につながります。
最後に|空撮は「飛行スキル」より「現場設計」で勝つ
空撮で一番多い失敗は、「撮りたい気持ち」が先に立ち、安全設計が後回しになることです。
逆に言うと、ロケハンで区切りを作り、飛行ルートを絞り、中止基準を先に決めれば、映像の完成度も上がります。
“上手い人”より、“崩れない設計ができる人”が、空撮では長く勝ちます。



